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There was in fact no correlation between exiting phase gates on time and project success … the data suggested the inverse might be true.

—Dantar P. Oosterwal, The Lean Machine

原則#5 - マイルストーンは動作するシステムの客観的な評価に基づく

フェーズゲートマイルストーンの問題点

今日の大規模なシステムの開発には、大量のリソースが必要であり、その投資額は数百万ドル、あるいは数億ドルにも達することがあります。 開発者と顧客は、新たなソリューションの投資により必要な経済的ベネフィットが得られるように、相互信頼に基づく責任を持っています。 そうでは無い場合、開発を進めていく理由はあるのでしょうか?

ステークホルダーは、開発プロセス全体で見込まれる経済的ベネフィットの実現性を確保するために協力する必要があります。これは、最後まで願望的な考えだけに頼るのではなく、行動することを意味します。 この課題に対処するために、通常、業界では逐次的なフェーズゲート(ウォーターフォール)開発プロセスが適用され、特定のマイルストーンを通じて進捗状況を測定し、コントロールしています。

これらのフェーズゲートマイルストーンは適当に決まっているものではありません。 それは一見、論理的で順序立てられており、次に述べるプロセスに沿っています。要求の発見、要件定義、デザイン、開発、テスト、そしてデリバリーです。 しかしながら、それが常にうまくいくわけではないことを、図1が示しています。

図1 フェーズゲートマイルストーンの問題点
図1 フェーズゲートマイルストーンの問題点

問題の原因は、「フェーズゲートプロセスは実際の進捗状況を明らかにすることによってリスクを低減する」という仮定に内在する以下の4つの重大な誤りを認識していないことです。

  • 実際にシステムを構築しないサイロ化された機能組織において要件と設計決定を集中させて進める。
  • 早すぎる設計決定を強制し、それにより、実現可能性判断の見誤りを引き起こすことになる。[1]
  • ポイントソリューションが存在し、システムを最初から正しく構築できると仮定する。 この仮定は、プロセスに固有のバラツキを無視し、それに対しての解決策を提供することはなく、 バラツキは、次第に表れ大きくなってしまう。
  • 早すぎる事前の決定を行うと、大量の要件、コード、テスト、そして長い待ち行列が生じる。 これらの長い待ち行列は、大規模なバッチ引き継ぎと遅いフィードバックを引き起こす。(原則#6 – 途切れることのないバリューフローを実現する)

客観的な証拠に基づくマイルストーン

明らかに、フェーズゲートモデルは意図した通りにリスクを軽減することはありません。 それと異なるアプローチが必要です。 この原則 — 迅速で統合された学習サイクルでインクリメンタルに構築する — は、このジレンマに対処する戦略を提供します。

このアプローチでは、システムはインクリメントで構築され、それぞれが統合ポイントです。 各統合ポイントは、開発中のソリューションの実現可能性を実証します。 フェーズゲート開発とは異なり、各マイルストーンは各ステップの一部 — 要件定義、設計、開発、テスト — を含み、完全なバリューのインクリメントを生み出します。(図2)

図2 マイルストーンは動作するシステムの客観的な評価に基づく
図2 マイルストーンは動作するシステムの客観的な評価に基づく

さらに、これはケイデンス(原則#7 - ケイデンスを適用する。分野横断のプランニングで同期する)をもって、定期的に行われ、これにより予定された時間の境界における定期的な評価を行うために必要な規律が提供されます。 この定期的な評価では、あまり望ましくない選択肢があれば、それをすばやく取り除きます。

構築中のシステムの性質とタイプが、これらの重要な統合ポイントで何が測定されるかを決定します。 しかし、システムは、ソリューションの開発ライフサイクル全体を通じて、関連するステークホルダーによって頻繁に測定、アセスメントし、評価することができます。 この定期的な評価は、継続的な投資が相応のリターンを生み出すことを保証するために必要な、財務、技術、そして目的適合性のガバナンスを提供します。

この原則に基づき、SAFeはいくつかのマイルストーンを明示しています。 例えば、PIシステムデモは、進捗、プロダクト、プロセスに対する客観的なメトリクスを提供するために特別に設計されています。これは図3が示している通りです。

 

図3 すべてのPIシステムデモでの進捗、プロダクト、およびプロセスのメトリクスを客観的に見ていく
図3 すべてのPIシステムデモでの進捗、プロダクト、およびプロセスのメトリクスを客観的に見ていく

進捗のメトリクスは、組織がソリューションを提供することに向かう現在のミッションが予定通り進捗しているかどうかを示します。 プロダクトメトリクスは、ソリューションが市場でどのようにパフォーマンスを発揮しているかについての客観的なデータを提供し、将来のニーズに対する気づきを提供します。 プロセスメトリクスは、現在進行中の改善項目の可視性を高めます。 これらの客観的なメトリクスを組み合わせることで、ステークホルダーは頻繁にビジネスと技術の進捗状況をアセスメントし、評価し、ソリューションへの投資を続けるか、他の領域へ投資を割り当てるかを決定することができます。

 


詳しく学ぶ

[1] Oosterwal, Dantar P. The Lean Machine: How Harley-Davidson Drove Top-Line Growth and Profitability with Revolutionary Lean Product Development. Amacom, 2010.

 

最終更新: 2023年3月14日