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Tony Fadell, Build [1]

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プロダクトマネジメント

プロダクトマネジメントは、顧客のニーズを満たし、魅力的で経済的に妥当であり、実現可能で持続可能なソリューションを定義し、プロダクトのライフサイクル全体での開発を支援する機能です。

その役割は、ソリューションの複雑さに応じて拡張します。 一部のソリューションでは、プロダクトマネジメント機能はひとりのプロダクトマネージャーによって実行できますが、場合によっては、プロダクトマネージャーのチームが必要となるかもしれません。

詳細

成功したソリューションは、プロダクトライフサイクルの4つの明確なステージ、つまり導入期、成長期、成熟期、そして衰退期を進みます。 プロダクトマネジメントは、各ソリューションをこれらのステージを通じて導き、ソリューションのライフサイクルを通じて最大のビジネスバリューが達成されることを確認します。

ソリューションが社内で消費されるか社外で販売されるかに関わらず、プロダクトマネジメントはその成功に不可欠です。 この記事では、SAFeにおけるプロダクトマネジメントの多面的な役割と、継続的かつ持続的なバリューのデリバリーをどのように可能にするかについて説明します。

主要なコラボレーション

アイデアを価値あるプロダクトやサービスの安定した流れに変換することは、組織全体での継続的な調整とコミュニケーションを必要とする複雑な試みです。 プロダクトマネジメントはこのプロセスに不可欠ですが、それを単独で実行するための全ての分野の知識やキャパシティを持っているわけではありません。 図1は、プロダクトマネジメントが迅速かつ効率的なプロダクト開発フローを可能にするために維持する協力的なパートナーシップを示しています。

Figure 1 - Key Product Management collaborations
図1 プロダクトマネジメントの主要なコラボレーション

図の各枝は、プロダクトマネジメントがプロダクトのライフサイクルを通じてソリューションを効果的にガイドするために活用する一連の関係を表しています。 これらの関係性の性質を以下に記述します。

  • 成果にベクトルを合わせる - プロダクトマネジメントは、ソリューションが具体的なビジネスバリューを提供することを確実にします。 顧客ビジネスオーナー、そして適切な場合にはソリューションマネジメントと直接協力して、市場要因、望ましい経済的な成果、そしてプロダクト戦略に影響を与えるより広範なソリューションビジョンを理解します。
  • ARTを進める - プロダクトマネジメントは、システムアーキテクトリリーストレインエンジニア (RTE) と頻繁に協力して、ARTを成功したデリバリーに向けて導きます。 これら3つの役割が一体となることで、重要なリーダーシップを形成し、プロダクト戦略と実装の間における相乗効果を常に保ちます。
  • ソリューションを進化させる - 最終的には、アジャイルチームがソリューションを開発し、提供し、継続的に強化することにより、プロダクト戦略を実行することが求められます。 プロダクトマネジメントは、それらのチームのプロダクトオーナーと頻繁に同期を取り、正確なビジネスコンテキストを提供し、実装の実現可能性についてのフィードバックを受け取ります。

責任

SAFeにおけるプロダクトマネジメントの責任は、図2に示すように、主に5つの分野に分かれています。

図2   プロダクトマネジメントの責任分野
図2 プロダクトマネジメントの責任分野

各責任分野は以下に説明されており、プロダクトマネジメント機能が顧客と企業に最大のバリューを提供することを確実にするための追加のガイダンスが続きます。

市場とユーザーを調査する

プロダクトマネジメントは、ソリューションコンテキストを継続的に探求し、市場ダイナミクスとユーザーの好みについての定性的および定量的な気づきを収集します。 これらの気づきは、ビジネス戦略と技術戦略の両方に情報を提供し、継続的デリバリーパイプラインを推進する仮説を生み出します。

  • Conduct primary and secondary research – Primary data answers specific questions about product-market fit in specific usage contexts. Secondary data reveals macro-level trends across broad cross-sections of the market. Product Management leverages both to inform overall product strategy and specific elements of product design.
  • 市場細分化を適用する - すべてのユーザーが同じではありません。 ユーザーは異なる課題を抱え、異なる機能を望み、プロダクトに対するバリューの評価も時期により異なります。 プロダクトマネジメントは、共通の特徴に基づいてユーザー層をセグメントに分け、最も魅力的なセグメントに向けてソリューションを定義します。
  • 市場リズムと市場イベントを特定する - 市場リズムは、予測可能で、多くは季節的な供給とデマンドのパターンで、定期的なリリースのスケジュールを明らかにします。 規制の変更、特許の満了、競合他社からのリリースなどの市場イベントは、より散発的に発生するもので、プロダクトマネジメントがサイクル外のダイナミックなリリースを計画する必要があります。
  • エンドユーザーのニーズを理解する - ソリューションが最大のビジネスベネフィットを提供することを確実にするためには、エンドユーザーのニーズを深く理解することが必要です。 プロダクトマネジメントは、リーンUX、人間中心設計 (HCD)、ジャーニーマップなどの反復的な誘導手法を使用して、常に変化するニーズに合わせてプロダクト戦略を進化させます。

顧客と連携する

プロダクトマネジメントは、プロダクトのライフサイクル全体を通じて直接顧客と関わります。 これにより、顧客のニーズが最初からプロダクト戦略に組み込まれ、顧客のニーズが時間とともに変化してもリリースされたソリューションに反映され続けることを保証します。

  • 顧客中心のマインドセットを採用する - 効果的なプロダクトマネジメントは、すべての決定の中心に顧客を置く顧客中心のマインドセットによって推進されます。 デザイン思考のツールとテクニックを支えに、このマインドセットにより、魅力的で経済的に妥当であり、実行可能で持続可能なソリューションの創出に組織全体が集中できます。
  • 顧客に共感する - ソリューションは価値ある体験を提供する必要があります。 そうするには、組織が各ソリューションを顧客の視点から設計し、既成の考えを一旦脇に置くことが求められます。 プロダクトマネジメントは、ペルソナ、共感インタビュー、共感マップ、および関連ツールを利用して、顧客の要望とニーズを把握し伝えるために率先します。
  • デザイン思考を適用する - デザイン思考は、プロダクトの全生涯サイクルにわたってソリューションが魅力的で経済的に妥当であり、実行可能で持続可能であることを確保するための全体的で反復的なアプローチです。 プロダクトマネジメントは、解決すべき問題を完全に理解し、それらに最適なソリューションをデザインするために、デザイン思考の実践とツールを活用します。
  • 顧客を継続的に関与させる - アジャイルプロダクト開発は、継続的なプランニング、実行、確認、調整を必要とする反復的なプロセスです。 プロダクトマネジメントは、顧客を頻繁に継続的な探索PIプランニング、そしてシステムデモに関与させることで、この連続的なフィードバックループを推進します。

プロダクト戦略、ビジョン、ロードマップの定義

プロダクトマネジメントは、ポートフォリオ戦略と実行をつなぐ重要な役割を果たします。 顧客のニーズは、アジャイルチームによって提供でき、測定可能なビジネスの成果を達成できるソリューションの概念に変換される必要があります。

  • 戦略をビジネス目標に合わせる - プロダクトマネジメントは、プロダクトの戦略、ビジョン、ロードマップをポートフォリオの戦略テーマに合わせ、ポートフォリオビジョンリーン予算ガードレールとのベクトルを合わせること、そして必要に応じてソリューションビジョンとのベクトルを合わせる責任があります。 エピックオーナーの役割を引き受ける際、プロダクトマネージャーは、エピックのリーンビジネスケースも定義し、管理します。
  • 公正なバリュー交換モデルを確立する - SAFe原則#1 - 経済的な視点を持つに従い、プロダクトマネジメントは、ソリューションから顧客が求める特定のバリューと、企業が見返りに求めるバリューを特定します。 企業とその顧客の間での公正なバリューの交換は、ソリューションが相互に持続可能なベネフィットを提供することを保証します。
  • 魅力的なビジョンを作成し伝える - プロダクトマネジメントは、プロダクトのビジョンを継続的に洗練しARTに対して伝えます。 各PIプランニングセッションで、プロダクトマネジメントはビジョンを提示し、優先順位をつけられたフィーチャーと関連するマイルストーンを強調します。 適切な場合、プロダクトマネジメントはプリPIプランニングの間にソリューションマネジメントと協力して、プロダクトビジョンをソリューショントレインのステークホルダーに伝え、それをソリューションビジョンと調整します。
  • 柔軟なロードマップを管理する - プロダクト戦略とビジョンは、実装を導くロードマップに組み込まれます。 プロダクトマネジメントが、プロダクトのライフサイクルを通じて変化するビジネス目標と顧客のニーズに対応してプロダクトの戦略とビジョンを調整すると、それらが影響を与えるロードマップも調整されます。

ARTバックログの管理と優先順位付け

プロダクトマネジメントは、ARTバックログを通じてワークフローをサポートし、常に顧客の最新のニーズを反映します。

  • フィーチャーの作成を導く - フィーチャーは、特定の顧客のニーズを満たし、単一のPI内で提供することができるソリューションの特徴です。 プロダクトマネジメントは、ARTバックログのフィーチャーが明確なベネフィット仮説と受け入れ基準を含むことを確実にします。
  • WSJFでフィーチャーの優先順位をつける – ARTの主要な経済的ドライバーであるフィーチャーの適切な選択と順序付けのために、プロダクトマネジメントは、各PIプランニングセッションの前に、バックログがWeighted Shortest Job First (WSJF)で再度優先順位付けされることを確認します。
  • フィーチャーを承認する - 顧客の代わりに行動するプロダクトマネジメントは、ARTバックログを通じて実装されたフィーチャーの完成度を評価します。 この最終的な確認は、フィーチャーの実装をその受け入れ基準と比較し、それがリリースされるのに十分なビジネスバリューを持っているかどうかを判断します。
  • アーキテクチャランウェイをサポートする - プロダクトマネジメントは技術的な決定を推進することは期待されていませんが、アーキテクチャランウェイの継続的な開発と保守をサポートすることが期待されています。 システムアーキテクトとのコラボレーションにより、ARTバックログ内のビジネスとイネーブラーのフィーチャーの均衡をとるキャパシティ配分の交渉をします。
  • ARTイベントに参加する - プロダクトマネジメントは、PIプランニング、インスペクト&アダプトのアクティビティ、隔週のシステムデモ、ソリューションデモ、およびPIシステムデモで重要な役割を果たし、積極的に知識を伝え、フィードバックを収集し、プロダクト関連の問題に対処します。 また、ビジネスオーナーとしても参加し、PIオブジェクティブの承認、ビジネスバリューのアセスメント、リスクの管理も行います。

バリューをデリバリーする

プロダクトマネジメントは、最適な市場タイミングでバリューをリリースするために、継続的デリバリーパイプラインを活用します。 コンテキストによりますが、これは1日に複数回、週に1回、月に1回のリリース、または顧客のニーズと企業の目標との均衡がとれた際のリリースを意味することがあります。

  • バリューストリーム全体で協力する - 内部顧客を持つプロダクトマネージャーは、デベロップメントバリューストリームのステークホルダーや参加者と協力し、ソリューションが企業にバリューを提供することを確実にします。 外部顧客を持つプロダクトマネージャーは、オペレーショナルバリューストリーム内の人々やチームと協力して、市場向けのソリューションを提供し、維持します。 必要に応じて、プロダクトマネジメントはソリューショントレイン全体で協力し、ART間の依存関係を管理し、プロダクトが大規模ソリューションにタイムリーに統合されることを確認します。
  • プロダクトの完全性を確保する - プロダクトマネジメントは、ソリューションが幅広い顧客のニーズを満たすことを確認します。 「ホールソリューション」は顧客の視点から設計され、それらが一緒になって完全で魅力的なエンドユーザー体験を提供する複数のフィーチャーを含みます。
  • オペレーションを有効化する - プロダクトマネジメントは、オペレーショナルバリューストリームの主要な機能に対してサポートと有効化を提供し、すべてのリリースのバリュー全体が実現されることを確認します。 例えば、マーケティング、セールス、顧客成功、コンプライアンス、そしてチャネルパートナーは、プロダクトのローンチに向けて顧客、ステークホルダー、およびオペレーションチームを準備するための支援を受けます。
  • オンデマンドでバリューをリリースする - 継続的デリバリーパイプラインは、ソリューションのデプロイメントがリリースアクティビティから切り離されることを保証します。 これにより、ステークホルダーや顧客からのインプットを受けて、ビジネスにとって最適なタイミングでリリースするための権限がプロダクトマネジメントに与えられます。
  • ビジネス目標を達成する - 経済的に妥当なソリューションは、コストよりも多くのバリューを生み出します。 コストは比較的簡単に測定できますが、バリューはしばしば無形です。 さらに、企業はバリューを異なる方法でアセスします。 プロダクトマネジメントは、企業のコンテキスト内でソリューションのバリューを定義し、それを追跡してビジネス目標が達成されたことを確認する上で重要な役割を果たします。

内部顧客 vs. 外部顧客

プロダクトマネジメントには、顧客を深く理解することが求められます。 顧客がすべてのソリューションのバリューを決定するため、リーンアジャイル開発プロセスの不可欠な部分です。

SAFeでは二種類の顧客を定義します。

  • 「内部顧客」は企業の一部です。一つまたは複数のデベロップメントバリューストリームからソリューションを受け取り、一つまたは複数のオペレーショナルバリューストリームでそれらを活用します。 例えば、銀行の審査マネージャーチームは、IT部門が作成した信用評価ソリューションの内部顧客となる場合があります(図3)。
図3   プロダクトマネジメントは、内部および外部の顧客をサポートする
図3 プロダクトマネジメントは、内部および外部の顧客をサポートする
  • 「外部顧客」は企業の外部にいます。 外部顧客は自身のベネフィットのために、ソリューションを購入、ライセンス契約、または使用します。 図3は、オペレーショナルバリューストリーム内のソリューションを使用してローン申請を提出し、ローンを返済する外部の顧客を示しています。 企業と外部の顧客との関係は、企業間取引 (B2B)、企業対消費者取引 (B2C)、または企業対専門家取引 (B2P) の形を取ることができます。

組織全体のプロダクトマネージャーが、いくつかの統合済みソリューションから成る最終ソリューションを開発するために協力することが一般的です(図4)。

図4   プロダクトマネージャーのチームが協力してソリューションを作り出す
図4 プロダクトマネージャーのチームが協力してソリューションを作り出す

この例では、モバイルバンキングソリューションがモバイルバンキングプロダクトマネージャーによって外部顧客に提供されます。 モバイルバンキングアプリは、デジタルプラットフォームプロダクトマネージャーが提供するセキュアで準拠したeバンキングプラットフォーム上に構築されています。 銀行基幹システムのプラットフォームは、クラウドプロダクトマネージャーによって提供されるスケーラブルなクラウドインフラストラクチャに基づいて構築されています。 それぞれが、直接の顧客によって消費されるか、さらに強化される価値あるプロダクトまたはサービスを提供するソリューションを監督します。 このシナリオは、特に大規模ソリューションの開発でよく見られます。


詳しく学ぶ

[1] Fadell, Tony. Build: An Unorthodox Guide to Making Things Worth Making. Harper Business, 2022.

最終更新: 2023年7月4日